<S(エス)―Since1992>に期待する

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<S(エス)―Since1992>に期待する

□「ベン・ブラッドリー自伝―『ワシントン・ポスト』を率いた編集主幹」邦訳[1]が出版された。

翻訳者の一人は知人だ。(醒)が大学時代を過ごした寮生活の思い出を書けと迫った奴だ。戦後日本ジャーナリズム史を研究し、現状、立命館大学産業社会学部メディア社会専攻教授。

□激励のメールを送ろうかと考えた。その前に、出版物に目を通さないといけない。タイトルを盛れば一目瞭然だが、ブラッドリーの経歴の中心は、ペンタゴン文書[2]ウォーターゲート事件[3]報道の編集幹部である。

取材記者のボブ・ウッドワード[4]カール・バーンスタイン[5]を叱咤したことだろう。

□2人の記者名は当初から知っていた。少し年上の上司年代で絢爛たる名声に興味をひかれたが、所詮は土俵が違う。

羨みようもない別世界の人間だが、新聞社に入社して間もない頃にニュージャーナリズムの担い手だとしてイヤというほどその名を聞いた。

□関連書籍を買い込んではみたが、所詮は<積読>。日本のジャーナリズムの担い手である若い記者の多くは、自分の目の前に回ってきたテーマと格闘するしかない。その一人であった(醒)に、邦訳出版がいい機会をくれた。勉強をし直すというか、手つかずにしていた事柄を整理すればよい。「訳者あとがき」が役立った。

□モノはついで、ウィキでデイヴィッド・ハルバースタムの「メディアの権力」を斜めに読んで米国のジャーナリズム史を復習した。

□おかげでスッキリ、(醒)がこれまでやってきたことは、ボブやカールらとなんら遜色はない。目の前にあるテーマ=隠蔽される真実を暴く=仕事だと改めて納得した。メディアの経営者や史学研究者の立ち位置とは異なるが、鷲づかみの報道そのもだった。

□気分はいいのだが、目の前の現実は酷い。マスコミ(新聞、TV)がまっとうに機能していない。報道に携わる人々は自覚を噛み殺して仕事をしているはずだ。生駒望さんに執筆作業を急がせよう。

□「<S(エス)―Since1992>赤石基樹の物語」が干からび果てた日本のジャーナリズムに救済をもたらすことを期待して。(醒)

 

[1] 法政大学出版局 A5判 / 556ページ / 上製 / 価格 4,950円

[2]『ニューヨーク・タイムズ』のトップページで公開(1971)、ベトナム戦争の舞台裏を暴いた

[3] 民主党本部で起きた中央情報局(CIA)工作員による盗聴侵入事件(1972.6) 「大統領の陰謀」のタイトルで書籍や映画となり、秘密のネタ元<ディープスロート>なる言葉が膾炙した

[4] 1943.3.26~

[5]  1944.2.14~

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