遮眼帯 マイナと万博

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マイナンバーカードを巡る論議がネットや新聞紙面上で騒々しい。いくつかに目を通してみたが、腑に落ちない。そこでモノは試し。最近PC上に出てくるようになった<新しい Bing へようこそ AI を利用した Web向け copilot>に尋ねてみた。

Q:日本のマイナンバーカード問題について、論点を挙げて説明してください。

A:マイナンバーカードに関しては、いくつかの問題が報告されています。

例えば、マイナンバーカードには、オンライン資格確認に対応した医療機関でしか使えないという制限があります。

また、有効期限があり、期限が切れると身分証明書としての効力を失います。

カードには個人情報が内蔵されており、紛失した場合は個人情報漏洩のリスクがあります1。

さらに、別人の情報が登録されるミスなどが次々と明らかになっています2。

これらの問題は、人為的ミスやシステム上の問題などが原因とされています3。(7/2正午時点の回答)

――とまあ、こんな調子だ。医療機関に触れてはいるが、健康保険証は出てこない。

そこで、「マイナンバーカード」と「保険証」で検索したら、ボリューム溢れる記事(A4ワードで12ページ相当)に遭遇した。これにも目を通したところ、<AIで記事を要約する(β)>というボタンがあり、当然ながら実行した。便利なモノだ。

「AIによる要約――

  • 2024年秋に健康保険証が廃止される話題と、マイナンバーカードを使ったセルフレジでの年齢確認について触れられている。
  • しかし、報道やSNSの反応では認識不足や誤解が多く、間違った情報が拡散されていることが問題視されている。
  • 実際の問題は紐付けミスであり、マイナンバーカード保険証に関連付けられた保険証が他人と結びついていることが発覚した。
  • しかし、紐付けミスの割合は全体の01%未満であり、ヒューマンエラーやプログラムミスは避けられないものである。
  • マイナンバーカードの活用事例として、コンビニでの年齢確認が挙げられているが、具体的な実施方法はまだ決まっていない。
  • また、マイナンバーカードは身分証明書であり、デジタル化や省力化を進めるための第一歩として位置づけられている。

この要約はChatGPTによって自動生成されたものであり、原文の完全性や正確性を保証するものではありません。この機能はベータ運用中です。」(7/2 同)

文章に表した「判断」の主体(=主語)の処理が粗雑だが、まあ頷ける。便利なモノだ。これらを見て、ヒトは気が付くだろう。AI(人工知能)というものは、そこに書かれて存在するものを読み取って整理することはできるようだが、書いてないもの、存在しないものは読み取れていない。

致し方なしといえばそれまでだが、マイナンバーカードが登場するまでの歴史や経緯が全くない。だが、人間には記憶がある。国民総背番号制だとか住民基本台帳、住基ネットに関わる憲法裁判、傍らでe-Japanというのもあった。だが、記憶は人々の頭の中で次第に薄らぎ霞む。いくつかのキーワードをもとに記憶を呼び起こしてみれば、今回の「マイナ騒動」がいかに馬鹿馬鹿しいかふつふつと怒りがこみ上がるのではないか?

わが政府のやろうとしていることは、この30年間まったく進歩がない。

「日本は世界に比べて立ち遅れている」――この掛け声は多くの国民を驚かせ、焦らせ、煽り立てるにはもってこいだった。他国に比べて、劣っている? 欧米諸国ならともかく、韓国や中国の後塵を拝しているなんて耐えがたい。歴史的な優越感や劣等感、差別感情・非差別感情が折り重なり、表面的な態度や発言には現れずとも、内心に不快感が渦巻く。

政府は、何を如何しようとしているのかを説明せず、外形的な数字に表れる差異を示すことで<追いつけ追い越せ>を唆す。政治と行政のあらゆる局面で、知ってしまえばあまりにも稚拙な政策手法を繰り出して国民を愚弄してきた。

総背番号にしても住基ネットにしても(e-Japanにしても)、何を実現したいのかを説明せず、外面的な体裁のみを提示して国民を駆り立てたのだが、悉く失敗してきた。

その反省もなく、この度のマイナンバーカードだ。マイナポイントだ補助金だと煽るが、賢明な国民は首を傾げ、現場の作業に携わる従業員は何等の熱意も抱いてはいない。

ここでいう従業員とは、国家や自治体の公務員ではない。人材と経費のマヤカシで生まれたアウトソーシングの派遣職員だ。大型政策が動けば、派遣業を営む。やれ災害交付金だ、コロナの補助金だ、五輪だ、万博だと政治がカネを動かすたびに政府に寄り添う寄生虫企業がほくそ笑む――苦い体験、無念の記憶、あまりにもバカバカしくてやってられない。

残念ながらAIは、こうした体験を遡ることができない。マイナンバーカードひとつを取り上げても、過去に世論を揺り動かした<背番号>や<住基ネット>、<憲法13条>と結びついた文献はない。背番号や住基ネットが後世の<マイナンバーカード>を知る由もないからだ。

政府が国家を経営する。民主主義を報じるならば、この命題を否定できるか?

天皇や王様が国家を経営するわけではない。企業が経営するわけでもない。誰が経営するのか――国民が選挙で選んだ政治家、その政治家が組み立てた政府、それ以外の誰が国家を経営するのか?

国家の礎は、国土と国民だ。これを合理的に管理し、運営するのが政府の職務である。

合理的に、IT技術、奴隷的作業に文句も言わず間違いも犯さずに働き続ける電気的コンピューターを使いこなすことに道徳的な躊躇があるか?――これがマイナンバーの本旨ではないのか。

こんな単純なことを明言せずに迂回路を辿って国民を愚弄し続けてきたのがわが政府だ。

富国強兵、殖産興業、税制改革――明治の政治理念は明快だった。これが日清戦争、日露戦争、支那事変(日華事変、日中戦争、大東亜戦争)と進展した歴史問題に圧迫されて、素直に政策説明ができなくなったということなのだろうか。

「戦後レジームからの脱却」を背負って安倍晋三は死んだ。プーチンが攻め込んだウクライナのゼレンスキーを招いた「広島G7」が「戦後レジームからの脱却」を具現化した、のかな?。そうであるなら馬鹿げた躊躇は無用だろう。言葉に囚われるより、実質と実態・実体を直視して、明快な議論をしたほうがいいだろう。

さて、2025年大阪万博。埋め立てた産業廃棄物を掘り起こしたくないなら、モンゴル人に倣えばよい。寄生虫企業が入札に応じないならそれもよし。ゲルには電気も通じるし、インターネットもOK。半年間の営為なら、それで十分。世界も納得するだろう。(醒)

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