戦後レジームからの脱却―2

戦後レジームからの脱却―2

元首相・安倍晋三暗殺事件の帳場(捜査本部)がある奈良西署は奈良市の西部、平城宮跡から生駒市との境界までを管轄する。グリコ・森永事件の発端となる社長誘拐事件が起きた1984に開設された比較的新しい署だ。記憶に残る事件といえば2004年暮れ、小学1年生女児・楓ちゃんの誘拐・殺人がある。犯人の新聞配達員はすでに死刑となった。

生駒市を挟んで阪奈道路と第二阪奈道路(有料)、近鉄奈良線・けいはんな線で繋がる大阪府のベッドタウンでもある。西からの弊風が影響したとはいわないが、いかにも警察らしい不祥事が下地となって暗殺に結びついたと新聞が伝えた。

同署が管理する拳銃弾5発を紛失したとして今年1月、「申し訳ない」と報道発表をした。ところが、「実はもとから少なかったのを見落としていただけで、紛失ではなかった」と再度の謝罪発表を7月8日に設定し、所轄・県警本部が浮足立っていたところに元首相の応援演説が舞い込んでパニックを招いたと15日の読売が報じた。

それだけの話ならバカバカしいと笑えるのだが、翌朝刊で朝日が「実弾5発の窃盗容疑で署員が取り調べられ、うつ病で休職」とフォローした。問答無用の犯人扱いで自宅を捜索され、「どっちにしたかって、もうお前のせいになんねんから」「お前しかおらん。うそつくな」「いろんな罪を掘り下げて何度でも逮捕する」と執拗に責め続けられて発症したという。

なるほど、これならさもありなん。犯罪者捏造まで発表するつもりならば、選挙関連の警護・警備が上の空になったのも頷ける。情なくはあるが、それが警察の飾らぬ姿である。県民の利益も署員の人権も要人の安全も眼中にない。あるのは己のメンツだけ。後先を考える能力もないほどに浮足立ってパニックに陥る。だが、署員の人権を踏みにじったとは、よもや認めるはずもない。当事者以外に誰も目撃者はいない。すべては密室の内側で起きたことなのだ。

警察という組織自体が抱えた病気、宿痾なのだから如何ともし難い~で済ませてきたのも戦後レジームの一形態である。(醒)

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